【雇用契約書なし・給与手渡しは危険?中小企業が知っておきたい5つのリスク】
「うちは家族や親戚、昔からの知り合いしか働いていないから、雇用契約書なんて作っていない」
「給料も毎月現金で手渡しているよ」
中小企業や個人事業主の方から、こうした話を聞くことがあります。
たしかに、昔から付き合いのある人が働いていると、
「お互い分かっているから大丈夫」
と思ってしまうのも無理はありません。
しかし、親戚・知人だからといって、労働関係のルールがなくなるわけではありません。
むしろ、普段は問題なくても、退職や給与トラブルが起きた瞬間に、
「言った・言わない」
の問題になってしまうことがあります。
今回は、雇用契約書がなく、給与を現金手渡ししている会社が注意したいリスクについて解説します。
登場人物紹介

個人カフェ経営者
従業員も2人いるがどちらも
昔からの知り合いと親戚なので
契約書も交わしていなく、
給与も手渡し。
この状況って大丈夫なのかな?
と最近悩むようになっている。

通りすがりの社労士
労務管理に悩んでいる経営者の元に
突然現れる。
そもそも「給与手渡し」は違法なの?!

今更だけど、うちの店契約書もないし、
給与も手渡しだけどいいんだろうか…?

ご自身のお店のことでお悩みですか?

え?どなたですか?

突然すいません!
通りすがりの社労士です。
労務管理周りのことで悩んでいませんか?

そうなんですよね💦
うちのお店親戚とか知り合いのみ
なので契約書もないですし、給与も手渡し
何ですよね。
今更なんですけど、給与手渡しって
法律的に問題ないですよね?

そうですね。
まず、ここは誤解されやすい
ポイントですが
給与を現金で手渡しすること自体は、
原則として違法ではありません。
労働基準法では、賃金について、
- 通貨で支払う
- 労働者本人に直接支払う
- 全額を支払う
- 毎月1回以上支払う
- 一定の期日を定めて支払う
という「賃金支払いの5原則」が
定められています。
そのため、現金を従業員本人に直接手渡す
方法は、原則としてルールに沿った
支払い方法です。

ならよかったです。

ただ、手渡し自体は問題ないのですが、
給与の計算・支払い・
記録がきちんと管理されているかが
大事なポイントです。

なるほど…

これから契約書、給与手渡しによる
今後のリスクについて
お伝えさせてもらっていいですか?

あ、はい
お願いします。
① 法律上の労働条件明示義務に違反する可能性がある

御社のように「親戚だから」
「昔からの知り合いだから」と、
雇用契約書や労働条件通知書を
作成せずに
働いてもらっている
会社もあります。
しかし、労働基準法では、
会社は労働者を採用する際に、
賃金や労働時間、休日などの
労働条件を明示することが
義務付けられています。
特に、賃金や労働時間などの
重要な事項は、
書面などによる明示が必要です。

え?そうなんですか?!

はい。
そのため、「親戚だから」
「信頼関係があるから」という
理由だけで口頭の説明にしていると、
労働条件の明示義務に
違反する可能性があります。
また、契約内容を書面で残していないと、
後になって認識の違いから
トラブルになることも少なくありません。

どんなトラブルが想定されますか?

こんなことが想定されます。
例えば、
「最初に時給1,200円って
聞いていた。」
会社側は、
「最初は時給1,100円で、
仕事を覚えたら1,200円に
上げる予定だった。」
というように、お互いの認識が
食い違ってしまうケースがあります。
働いている間は問題にならなくても、
退職時や人間関係が悪くなったときに、
「言った・言わない」の
争いになることもあります。
雇用契約書や労働条件通知書は、
会社を守るためだけでなく、
従業員との認識のズレを防ぐための
大切な書類です。

なるほど
退職時や人間関係の悪化の
タイミングですか。
そういったケースは想定していませんでした。
リスク②「残業代は払っていたつもり」がトラブルになる

給与を現金で手渡ししている会社で
特に注意したいのが、
残業代などの給与計算が
正確にできているかです。

給与計算はたぶん大丈夫だと
思うんですけど…
具体的にはどんなことがありえますか?

例えば、
- 基本給
- 時間外労働
- 深夜労働
- 休日労働
- 各種手当
- 控除額
などが明確になっていないと、
後になって給与額について
トラブルになる可能性があります。

やはり後でトラブルになる可能性が
あるんですね。

そうですね。
さらに、月給の場合ですが
「毎月〇万円渡しているから、
それで全部」
という考え方も注意が必要です。
固定残業代などの制度を
利用する場合には、
一定の条件を満たした
制度設計が必要になります。
単純に、
「残業代込みでこの金額ね」
と口頭で決めているだけでは、
十分とはいえません。
あわせて読みたい
残業代について気になった方
アメリオレ社会保険労務士事務所にお任せください。
リスク③「本当にその金額を払った?」という問題が起こる

給与手渡しの場合、銀行振込と違って、
通帳に自動的に記録が残るわけでは
ありません。

確かに記録に
残らないですよね。
今まで問題なかったのでで
手渡しのままでした。

もし今後
「先月の給与、もらっていません」
と従業員から言われた場合、
どうでしょうか?

証明のしようがないですね…

そうなんですよね。
会社側が、
「いや、ちゃんと渡したよ」
と言っても、そこで認識が
食い違ってしまいます。

ただ、
もちろん、現金手渡しでも、
- 給与明細
- 給与台帳
- 受領記録
- 支払日
- 支払金額
などを適切に管理していれば、
記録を残すことはできます。
つまり、
「現金手渡しだから危険」
なのではなく、
「現金手渡しなのに記録を
残していないこと」が危険
なのです。

記録に関しては
検討してみます。
リスク④ 税金や社会保険の処理まで曖昧になる

「親戚だから」「知り合いだから」という
理由で雇っていると、
給与の支払いだけでなく、
- 源泉所得税
- 年末調整
- 給与支払報告書
- 社会保険
- 労働保険
- 雇用保険
などの手続きまで曖昧に
なってしまうケースがあります。

確かに…
そこまで考えてませんでした。

従業員への給与が現金手渡しだからといって、
税務や社会保険上のルールがなくなるわけでは
ありません。
例えば、パート・アルバイトへの
給与についても、一定の場合には
源泉徴収が必要になります。
また、給与支払者には源泉徴収票の
作成・交付などの事務もあります。
「現金で渡しているだけだから簡単」
ではありません。
リスク⑤ 助成金を活用したいときに困る可能性がある

ここは会社経営者の方に、
ぜひ知っておいていただきたいポイントです。
将来的に、
- キャリアアップ助成金
- 業務改善助成金
- 人材開発支援助成金
- 両立支援等助成金
などの助成金を活用したいと思ったとき、
日頃の労務管理が曖昧だと、
申請準備で苦労する可能性があります。

え?
そうなんですか?

例えば、
「この人はいつから働いていますか?」
「雇用契約期間は?」
「週何時間勤務ですか?」
「賃金はいくらですか?」
「給与はいつ支払っていますか?」
「残業代はどのように計算していますか?」
と聞かれたときに、
「親戚だから口頭で決めていて……」
となると、必要な確認や
資料の整理に時間がかかってしまいます。
助成金は「申請するときだけ整えればいい」
というものではありません。
普段から正しい労務管理をしていることが、
結果的に助成金の活用にもつながります。

なるほど…
助成金ってものがあるのは
なんとなく知っていましたが、
日頃の管理が重要なんですね…
「親戚・知り合いだから大丈夫」が一番危ない?

親戚や知り合いだからこそ、
「細かいことは言わなくても分かっている」
「今までトラブルになったことがない」
「家族みたいなものだから大丈夫」
と思っていませんか?

はい。
そう思っていました…

しかし、会社と従業員という関係である以上、
「人間関係」と「労働条件のルール」は
分けて考えることが大切です。
仲が良いから契約書が
不要なのではありません。
むしろ、仲が良いからこそ、
最初に条件をきちんと書面にしておくことで、
お互いを守ることができます。

なるほど…
でも何からしていけばいいんですかね?

次で解説しますね!
何から整えていけばいいのか?!5ステップで解説
いきなり会社の制度を全部作り直す必要はありません。
① 従業員ごとの労働条件を確認する
- 入社日
- 雇用形態
- 契約期間
- 労働時間
- 休日
- 賃金
- 賃金の支払日
- 就業場所
- 業務内容
などを整理します。
② 労働条件通知書・雇用契約書を整備する
口頭だけでなく、労働条件を書面等で明確にしておきます。
2024年4月からは労働条件の明示ルールも変更されているため、古い書式をそのまま使っている会社は一度確認しておくと安心です。
③ 給与計算の方法を明確にする
基本給だけでなく、
- 残業代
- 深夜割増
- 休日割増
- 各種手当
- 社会保険料
- 税金
などを確認します。
④ 給与支払いの記録を残す
現金手渡しを続ける場合でも、
「いつ・誰に・いくら支払ったのか」
が分かるように記録しておきましょう。
⑤ 就業規則も確認する
常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則の作成・届出が必要です。
「昔からある就業規則が現在の会社の実態と合っているか」
も確認しておきたいところです。

まずはこの5ステップを
整えていきましょう

分かりました!
できるところからやっていきます。

もしこの整理が大変そうで
あればアメリオレ社会保険労務士事務所に
是非ご相談を!
どう始めればいいのかと悩まれている方
アメリオレ社会保険労務士事務所にお任せください。
最後に
雇用契約書がなく、給与を現金で手渡している。
この状態だけで、すぐに「違法な会社」と決めつけることはできません。
給与の現金手渡し自体は、法律上認められている原則的な支払方法の一つです。
しかし、
「契約書がない」
+
「給与の記録が曖昧」
+
「労働時間の管理も曖昧」
という状態が重なると、会社にとって大きなリスクになっていきます。
特に、
「親戚だから大丈夫」
「昔からこのやり方だから問題ない」
「今までトラブルになったことがない」
という会社ほど、一度チェックしてみることをおすすめします。
問題が起きてから慌てて対応するよりも、何も起きていない今のうちに整えておくことが、会社と従業員の両方を守ることにつながります。
「うちの会社も、雇用契約書や給与の管理がちゃんとできているか不安……」
そんな場合は、まず現在の状態を一度整理してみましょう。
労務管理は、トラブルが起きてからではなく、起きる前に整えることが大切です。
【経営者向け】こんな会社は一度チェック
☑ 従業員と雇用契約書を交わしていない
☑ 労働条件を口頭で伝えている
☑ 給与を現金手渡ししている
☑ 給与明細を渡していない
☑ 給与の支払い記録を残していない
☑ タイムカード・勤怠記録がない
☑ 残業代の計算方法が決まっていない
☑ 親戚・知人だから特別な扱いをしている
☑ 「今まで問題がなかったから大丈夫」と思っている
1つでも当てはまる場合は、一度労務管理を見直してみると安心です。
うちの労務管理大丈夫かな?と思った方
アメリオレ社会保険労務士事務所にお任せください。
ここまで読んでいただきありがとうございました!
